【学生向け】放射線治療計画の流れ解説【教科書よりわかりやすく】

こんにちは。
診療放射線技師のララです。

最近の診療放射線技師国家試験では、「放射線治療計画の流れ」について出題されているようです。
診療放射線技師国家試験の近年の出題傾向としては、全体的に「臨床寄り」「現場寄り」となっているのは確かです。

「診療放射線技師としてまだ働いてもいないのに、現場寄りの問題出されても困る…」

今回はこんな悩みに答えるべく、現役の診療放射線技師である僕が「放射線治療計画の流れ」について解説したいと思います。

放射線治療医による診察

そもそも、「この患者さんは放射線治療をすることになりました」っていうのはどうやって決まると思いますか?
これについてまずは解説します。

病気の診断

例えば、肺癌と診断された患者さんがいたとしましょう。
ではその肺癌はどこで診断されるでしょうか。
おそらく多くの場合、呼吸器科で診断されることになります。

その呼吸器科の先生は、手術がいいか放射線治療がいいかを考えます。
仮に、「この患者さんは放射線治療が最適である」と判断されたとしましょう。

しかし、呼吸器科の先生は放射線治療を自分で行うことはできません
放射線治療を行うには、放射線治療専門の先生が必要です。

放射線治療科への紹介

そこで、その呼吸器科の先生は放射線治療科の先生に「患者の紹介」という形で放射線治療をお願いすることになります。

そして、その患者さんは放射線治療科の先生のもとを訪れます。
そこで放射線治療科の先生による診察が行われるわけです。

放射線治療科の先生による診察では、主に以下のことが行われます。

  • 本当にその患者さんに放射線治療が必要なのかの判断
  • 放射線治療を行うにあたっての注意点の説明
  • 放射線治療を行うことへの同意の取得(患者さんは同意書にサイン)

特に、第72回診療放射線技師国家試験午後の部の36問目に、これについて出題されています。
放射線治療によるリスクや注意点を踏まえた上で、放射線治療を受けることへの同意を取得することが放射線治療の始まりとなります。

CTを撮る

患者さんが放射線治療を受けることに同意したら、さっそく放射線治療の準備に入ります。

放射線治療の準備って何かって言ったら、まずCTを撮ります
ぶっちゃけ「放射線治療なのに、なんでCTなの?」って思わないですか?
僕は学生時代にそう考えていました。

患者さんをデータ化する

本当にざっくりですが、放射線治療計画のためにCTを撮る理由を説明します。

放射線治療計画では、コンピュータ上で患者さんに放射線を当てます。
そして、腫瘍にはどれくらい放射線が当たったかを観察します。
さらに、正常組織にはどれくらい放射線が当たったかを観察します。

この作業を行うには、患者さんをデータ化してコンピュータ上に送らなければなりません。
放射線治療計画のためにCTを撮るのはこのためです。

固定具を作る

CTを撮る前に、必要に応じて固定具を作成します。
固定具は必ず作るわけではありません。
この辺は、なんか施設によってやり方が違うかなっていう印象です。

でも基本的に頭頸部の治療をやる場合は、ほぼ確実に固定具作ります。
シェルと呼ばれる固定具です。

固定具を作るという過程も、国家試験の問題として出題されています。
固定具を作るのは絶対にCTを撮る前です。

CTを撮ってから固定具を作るなんてことはありえません。
実際に放射線治療の時にはシェルをつけて照射するわけなので、CT撮る時もシェルをつけた状態でないといけないよねってことになります。

基準線を書く

CTを撮る作業はあまり難しくありません。
患者さんを寝台に寝かせて、CTを撮ります。
例えば、肺癌の放射線治療のためにCTを撮るとします。
この場合は患者さんの首から肝臓くらいまでCTを撮ればオッケーです。

CTを撮る前に、まだやるべきことがあります。
患者さんの体にマジックかなんかで基準線を書きます。

患者さんの体に書いた基準線の位置をゼロとします。
こうすることで患者さんの体の中を座標化します。

座標化すると、腫瘍の位置も座標で表すことができます。
例えば、「ゼロの位置から右に2cm、頭側に5cmの位置に腫瘍があります」みたいな感じですね。

ゼロの位置がどこかわからないと、腫瘍の位置を座標で表すことができません。
放射線治療計画でCTを撮る際は、必ずゼロの位置を決めて、そこにマジックで線を引いておくことを忘れないようにしなければなりません。

CTを撮り終わったら、その日はそれで終了です。
放射線治療開始はいつなのか、何時からなのかを患者さんに伝えたら、もう帰ってもらっていいです。

緊急の場合は、そのまま放射線治療計画まで作成してすぐ照射…というパターンもあります。
ですが、ほとんどの場合診察してCTを撮ったら、その日はそれで終了になると思います。

最後に、CTを撮る時に使った枕などの種類を記録しておきます。
放射線治療をする際には、CTを撮った時と全く同じ状況で治療台の上に寝てもらうことになります。

放射線治療計画装置の操作

撮影したCT画像は、放射線治療計画用のパソコンに送信します。

コンツーリング

放射線治療計画装置でまず何をやるかというと、コンツーリングです。
コンツーリングとは、例えば「ここが肺ですよ」とか、「ここが心臓ですよ」みたいな感じでコンピュータに各臓器の領域を教え込ませる作業です。

イメージで言うと、CT画像上でぬり絵をするような感じです。
「肺は青色でぬって」とか、「心臓はピンクでぬって」とかですね。
色は自分で決められるんで、まぁわりと楽しい時間だったりしますよ。

ところでこんな疑問はありませんか?
「コンツーリングをせずに、CT画像が送信された時点で肺や心臓などの臓器をコンピュータが自動で認識してくれないの?」
コンピュータなんだからそれくらいできないのって感じもしますよね?

いずれそうなりそうな気もします。
ですが、まだコンピュータはそこまで賢くはないみたいです。
「ここが肺だよ」とか「ここが心臓だよ」とかってのは、まだ人間が教えてあげないといけないみたいですね。

各臓器のぬり絵もしますが、もちろん腫瘍もぬります。
まずは腫瘍をそのままコンツーリングして、その領域をGTVとして、その一回り大きい領域をPTVとして…といった感じです。

CTVは、ないの?」って思いますか?
ぶっちゃけその辺の話は業務上あまり重要じゃありません。
放射線治療医である先生が決めることなのでね…
実際にコンツーリングしながら、先生にGTVとかCTVとかの話を教えてもらうのが一番効率がいいです。
学生の間は、とりあえず暗記でいいと思います。

コンツーリングが終わったら、次の工程に進みます。

ビームを作る

コンツーリングが終わったらビームを作っていきます。
コンツーリングしたPTVに向かって、どのようにビームを当てるかを考えていきます。
基本的には、ビームを作るのは放射線治療医です。

ビームをどの方向から当てるのか、いくつの方向から当てるのかを考えます。

例えば、前と後ろからまっすぐビームを当てれば、「前後対向2門照射」という当て方になります。
これに、右と左からのビームも加われば「4門照射」と言ったり、「BOX照射」と言ったりする当て方になります。
まぁ余談ですが、「2門照射」よりも「4門照射」の方が治療料金は高いです。

ビームの当て方が決まったら、実際にコンピュータ上で患者さんのCT画像に向かってビームを当ててみます。
すると、CT画像上に線量分布が描かれます。

線量分布の観察

線量分布って言われても、何を見るのかよくわからないですよね?
解説していきます。

腫瘍に当たる線量を100%に設定します。
それに対して、周りの正常組織にはどれくらいの線量が当たっているかを見るわけです。
意外だと思われるかもしれませんが、正常組織に対して105%とか110%とかどうしても当たってしまうことがあります。
こういう領域をホットスポットとかって言ったりします。

この場合は、ウェッジを使ったりField in Fieldなどの技術を使って照射野の中に線量勾配を作ります。
どういうことかっていうと、普通は照射野の中って均等にビームが当たるはずです。
でも、ウェッジやField in Fieldを使うと照射野の中に、線量が多い場所少ない場所を作ることができるんです。
これでホットスポットを多少減らすことができます。

ホットスポットを減らす方法は色々あるんですが、この辺の判断は経験が必要だったりします。
放射線治療医である先生たちはやっぱりすごいですね。
僕もたまにビーム作るんですけど、悩ましいときは先生に相談しないとわからないです…

まぁこんな感じで線量分布を観察しながら、ビームを作り終えたらこの工程は終了です。

スケジューリングする

放射線治療医によるビーム作成が終わったら、診療放射線技師が最後に仕上げを行います。

治療計画内容の確認

ダブルチェックとして放射線治療計画の内容を診療放射線技師が確認します。
確認しておきたいのは以下の内容ですかね。

  • 1回何Gyで照射するのか(その設定は妥当なのか)
  • 何回照射するのか(その設定は妥当なのか)

細かく言えば、確認すべきことは他にもあります。
まぁここは最低限確認しておいた方がいいです。

あとは「妥当なのか」っていう判断基準がちょっと微妙かもしれませんね…

例えば乳房の接線照射だと、1回2Gyの25回照射の合計50Gyにするのが通常です。
症例によってこの辺は変わります。
これは教科書で一生懸命覚えたわけではなく、業務をやってるうちに覚えました。

通常の回数と線量でなければ、先生に「これ本当に合ってますか?」と聞きに行きます。
そこで、間違いないっていう確認が取れればオッケーです。

スケジュール管理

あとはスケジュール管理ですね。
CTを撮った日に、患者さんに伝えたことがありましたね。
「初回の照射日はいつなのか、何時にくればいいのか」ですね。

この辺の情報を記録しておかないと、我々が忘れてしまいます。
電カルだったりRISなどに、そういった情報を記録しておきます。

照射

あとは設定された回数分、土日祝日を除いてですが毎日照射していけばいいだけです。

基準線に合わせることから始まる

いよいよ放射線治療が始まります。
患者さんには、治療台の上に寝てもらいます。
でも、この時点ではどこにビームを当てればいいのかわかりません。

そこで「基準線」を見ます。
まずは基準線とレーザーポインタを合わせます。
でも、この位置にビームを当てるわけではありません。

ビームを当てる位置がどこなのかは、放射線治療計画装置のパソコンで確認できます。
例えば、ビームを当てる位置が基準線の位置から右に2 cm、頭側に5 cmの位置であることが分かったとしましょう。

それに合わせて、寝台もその長さ分だけ動かします。
すると、基準線ではない位置にレーザーポインタが当たると思います。
そこがビームを当てる位置です。

その位置に、マジックで印をつけておきます。
次回以降の照射では、レーザーポインタをその印に合わせて照射すればオッケーです。

初回はリニアックグラフィで確認

ビームを当てる位置が決まったら、後は当てるだけです。
ですが、ビームを当てる位置が本当に正しいのかどうか、まだ証明できていません。
ここで、リニアアクグラフィを撮影します。

リニアックグラフィとは、実際に患者さんに当たったビームの先にフィルムを置いて、照射野を画像化することです。
「フィルム」っていうのは、少し表現が違うかもですね…

ここでは、特にEPID(Electric Portal Imaging Device)と呼んだりします。
EPIDは、ビームを検知してそれを画像化する装置です。

実は、放射線治療計画装置でコンピュータ上でもリニアックグラフィをあらかじめ撮影しています。
コンピュータ上のリニアックグラフィが、お手本のリニアックグラフィです。
コンピュータ上のリニアックグラフィ現実世界のリニアックグラフィを見比べます。

2つの画像が一致していれば、そのまま照射に進みます。
異なっていれば、寝台の位置を調整してもう一度リニアックグラフィを撮影することになります。

初回の治療は、リニアックグラフィを撮影する作業があるので、20分とか30分くらいかかります。
2日目以降の治療では、もうリニアックグラフィを撮影する必要はないので、10分くらいで済むと思います。
「念のため」ですが、週に一回はリニアックグラフィを撮影しているという施設もあるみたいです。
より慎重に治療するなら、それもありでしょうね。

最後に

長々とした説明になってしまってすみません…
以上が、放射線治療業務の一般的な流れです。

特に、学生のみなさんにとって「放射線治療というもの」への理解の助けにしてもらえたら幸いです。

冒頭でも説明した通り、診療放射線技師国家試験では「臨床寄り」、「現場寄り」の問題がわりと出題されています。
診療放射線技師の求人を見ても、「臨床経験者」が優遇されているのが事実です。

「じゃあ学生はどうすればいいの?」
って感じの世の中ですよね…

しかし、大学などの診療放射線技師養成機関はそんなのお構いなしです…。
昔ながらの教育が現代も続いています。

今のままでは、もはや大学は「診療放射線技師になるため」としても、「診療放射線技師国家試験に受かるため」としても、存在意義が微妙になってきました。

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教育を受ける上で、大学に全てを任せてしまうのはちょっと危険かもです。
上記の記事でも書いていますが、ダメもとでいいので病院でアルバイトしてみましょう。
どの病院も人手不足ですし、学生に診療放射線技師業務の補助をさせている病院も実際あるみたいです。

というわけで記事は終わりです。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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