CTの再構成とは何なのか【現場の仕事を解説】

こんにちは。
診療放射線技師のララです。

学生のみなさんは「CTの再構成について」といったら、その原理について一生懸命勉強する状況になってると思います。

でも、現場では正直「再構成の原理」とか考えていません。

「さっき検査した患者さん、骨条件も再構成しといて!
こういった指示に対して行動を起こさないといけないのが現実です。

今回は「CTの再構成」をテーマに、現場目線で解説をしていきます。

再構成の基本手順

繰り返しですが、現場ではCT再構成の「原理」は考えていません。
やってるのは「操作」です。

RAW(ロー)データが基本

CTで撮影をしても、いきなり画像は出来あがりません。

CTで撮影してまず得られるのは「RAWデータ」です。
RAWデータは、画像を作るための材料だと思ってください。

「CTを撮る」というのは、「材料を集める作業」みたいなイメージです。

材料であるRAWデータを「再構成」することで、CT画像が出来あがります。
再構成では、色んなパラメータを決めなきゃいけません。

再構成パラメータの内容を変えて、「軟部条件」「肺野条件」「骨条件」など複数の画像を作るわけです。

パラメータを決める

再構成では、主に以下のパラメータを決めます。

  • スライス厚
  • 再構成関数
  • ウインドウ
  • FOV

それぞれについて、以下で解説していきます。

スライス厚

スライス厚」という言葉をよく目にすると思います。

その名の通り、「スライスの厚さ」なわけですが…
現場ではどれくらいのスライス厚が用いられているか、知っておきたいものです。

基本は5 mm

CTでは、標準的なスライス厚は5 mmです。

多分ほとんどの診療放射線技師は、
「スライス厚は、施設によって違う
って言うかもしれません。

ですが、僕の経験上「5 mmが基本」という認識で通用すると思いますよ。

5 mmのアキシャル(横断)画像が最初に再構成されると思います。
とりあえず「5 mmが基本」という認識を持っておいて、就職した病院はどうなのか観察してみてください。

thin sliceは1 mmが基本

例えばですが、「尿管結石」という病気があります。
その名の通り、尿管に石ができる病気のことです。
尿管結石の大きさは様々ですが、2 mmとか3 mmとかだったりします

スライス厚5 mmの画像だと、2 mmとか3 mmの病気は見つけにくいです。

thin slice(シンスライス)の画像も再構成しておけば、細かい観察ができます。

thin sliceと言われたら、スライス厚は1 mmだと思っていいです。
これも同じように、ご自分の施設ではthin slieのスライス厚が何 mmなのか観察しておいてください。

thin sliceの画像は細かく観察できるとすれば、
thin sliceだけ再構成しとけばいいんじゃない?
っていう疑問が出てくると思います。

確かにそうです…
でも現場では、5 mmも1 mmも再構成します。

CT画像をパソコンで見るときは、マウスのホイールをコロコロさせてスライスをめくりながら見ます。

5 mmの画像は数回コロコロさせれば、だいたい最初から最後までスライスをめくれます。
でも、1 mmの画像はめっちゃ何回もコロコロさせないと最後のスライスまでたどり着けません。
これが意外と不便なんです…

スライス厚の使い分けは、主に以下です。

  • スライス厚5 mmの画像で、全体を観察する
  • スライス厚1 mmの画像で、細かく観察する

thin sliceでMPRを作る

MPR(multi planar reconstruction)という言葉を聞いたことがありますか?

「MPR作っといて!」
こう言われたら、
「コロナル(冠状断)、サジタル(矢状断)を作ること」
と考えてください。

MPRはアキシャル(横断)画像を使って作ることができます。

アキシャル画像を使って「コロナル画像」を作る
アキシャル画像を使って「サジタル画像」を作る

こんな感じです。

先述した通り、アキシャル(横断)画像はスライス厚5 mmとスライス厚1 mmを再構成しておきます。
5 mmの画像1 mmの画像のどっちを使ってもMPRは作れますが…

MPRはthin slice(スライス厚1 mm)のアキシャル画像で作りましょう。

これが結論です。

スライス厚5 mmのアキシャル(横断)画像でMPRを作っても、画像はボケます

再構成関数

CTの「再構成関数」というと、難しく聞こえるかもしれません。
でもここでは現場の仕事に絞って解説します。

再構成関数は「選ぶ」だけです。

再構成関数を大きく2つに分けると、「平滑化」と「鮮鋭化」です。

CT装置のメーカーによって違います。
再構成関数の種類が数十種類あるメーカーもあれば、10種類もないメーカーもあります。

  • めっちゃ平滑化したい
  • ある程度平滑化したい
  • ある程度鮮鋭化したい
  • めっちゃ鮮鋭化したい

再構成関数の種類の数が多いほど、「平滑化の程度」「鮮鋭化の程度」をより細かく決められるということです。

つまり選択肢がたくさんあるわけです。
とはいえ、各施設で「軟部条件はこの関数」「肺野条件はこの関数」「骨条件はこの関数」といった感じで、統一されていると思います。

じゃあ、どういう時に「平滑化」「鮮鋭化」を使うのか、以下で解説します。

軟部条件は「平滑化」寄りで

軟部条件は、平滑化寄りの再構成関数を適用する。

軟部条件は、体の中の臓器や血管を観察するのに適しています。

例えば、肝臓は軟部条件で観察します。
肺野条件や骨条件で肝臓を観察することはありません。

なんでかっていうと、鮮鋭化寄りの再構成関数だと肝臓がノイズだらけになって、病気があってもよくわかりません。

肺野条件、骨条件は「鮮鋭化」寄りで

肺野条件骨条件は、鮮鋭化寄りの再構成関数を適用する。

上記の通りです。

肺の病変骨折を見つけるためには、鮮鋭化寄りの再構成関数が必須です。
平滑化寄りの再構成関数だと、肺の病変とか骨折は見逃すかもです。

肺野条件の「平滑化」関数と「先鋭化」関数の比較です。
「先鋭化」の方が、肺野が見やすいです。

骨条件の「平滑化」関数と「先鋭化」関数の比較です。
「先鋭化」の方が、骨が見やすいです。

ウインドウ

CTについて勉強していると、「ウインドウ値」「ウインドウ幅」という用語が出てくると思います。

「ウインドウ幅」「ウインドウ値」について説明できる必要はありません。
両者とも数値を決めるだけです。

以下で、「ウインドウ幅」「ウインドウ値」の例を紹介します。
あくまで一例なので、みなさんが就職した病院ではウインドウがいくつに設定されているか観察してみてください。

ちなみに、ウインドウ幅は「WW」、ウインドウ値は「WL」と表記されることもあります。

軟部条件のウインドウ

ウインドウ幅: 250
ウインドウ値: 50

肺野条件のウインドウ

ウインドウ幅: 1500
ウインドウ値: -500

骨条件のウインドウ

ウインドウ幅: 2000
ウインドウ値: 500

FOV(Field of View)

FOVとは「画像化する領域」のことです。

一言で言えば上記の通りです。
FOVに関して、どう考えればいいかを以下で解説していきます。

FOVが小さいと画像が大きくなり過ぎる

FOVが小さいと、このような画像になります。

肝臓の一部がFOVからはみ出しています。
万が一はみ出した部分に病気があったら、その病気は100%見つけられませんね。

FOVが大き過ぎると画質が悪い

FOVが大き過ぎると、このような画像になります。

患者さんの体が、FOVの中におさまっているので一見問題なさそうですが…
多分この画像は拡大しないと観察できませんね

でも、画像は拡大表示すると画質が悪くなります

極端にFOVを大きくするのも間違いです。

ちょうどいいFOVとは

例えば、スマホで花の写真を撮ったとします。

近づいて撮れば、画質はいいですが全体像がわかりません

逆に遠くから撮れば、全体像はわかりますが花一つの画質は落ちます

FOVの考え方も同じです。

FOVは大き過ぎず、かつ対象物がはみ出ない大きさにするのが望ましいです。

最後に

CT再構成について、最後にまとめます。

CT画像を作るために必要な材料がRAWデータです。
RAWデータからCT画像を作ることをCT再構成といいます。

CT再構成するためには色んなパラメータを設定しなければなりません。
そのパラメータが以下です。

  • スライス厚
  • 再構成関数
  • ウインドウ
  • FOV

これらのパラメータを変化させて、「軟部条件」「肺野条件」「骨条件」の画像を再構成します。

RAWデータさえあれば、CT再構成は後からいくらでもできます。

ここがレントゲン検査と違うところかもです。
レントゲン検査の場合は、撮影した後はその画像を送信するだけです。

でもCTの場合は、撮影した後、再構成パラメータを設定して複数種類の画像を作成するというイメージです。
再構成した画像から今度はMPRを作ったり、3D画像を作ったりもします

CTは撮影した後の作業の方が大変だったりしますね…
でも、この作業が結構楽しいもので、CTが好きな診療放射線技師はわりと多い印象です。

僕が何より伝えたいのは、「CT再構成」というのは結局のところ仕事です。
現場では、「骨条件の画像を追加で再構成しといて!」といった指示に答えなければなりません。
「機械の操作ができる人材」の方が、現場にとって有益なのは明らかです。

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「CT再構成について説明できる能力」なんてぶっちゃけ必要ないし、現場もそこまで求めていません。

国家試験問題として「CT再構成について」みたいなのが出るのも結構謎です…
診療放射線技師になるために、必要以上に国家試験の勉強を頑張り過ぎても将来役に立たないのでご注意を。

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というわけで、今回は以上にしたいと思います。

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