【診療放射線技師】PACSとは何なのか【院内の画像クラウド】
こんにちは。
診療放射線技師のララです。
診療放射線技師を目指す学生のみなさんは、大学の講義などでPACSという用語を聞いたことがあると思います。
でもこの用語ですね、RISといつもセットで出てくる用語なので紛らわしいと思います。
ちなみにRISについてはこちらの記事で解説しております。
この記事を読めば、PACSが何なのか理解できるだけでなくRISとは全く別物であることも理解できるはずですので、ぜひ目を通していただければと思います。
PACSとは
PACSとは、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication Systems)の略です。
レントゲンやCTで撮影された画像はPACSに送信されます。
病院内のスタッフは、各端末からこのPACSにアクセスして患者さんの画像を閲覧することになります。
PACSの概要は上記の通りです。
もう少し具体的に解説していきます。
病院内だけのクラウドシステム
PACSは病院内だけのクラウドシステムです
僕がPACSを表現するなら上記です。
例えばCTで撮影した画像はCT装置自体にも保存しておけます。
しかし、CT装置自体の保存容量は実はそんなに多くないんです。
せいぜい1ヶ月か2ヶ月分くらいしか、もちません…。
CT装置自体にたくさん保存できないならどうするか。
クラウドにアップロードする。
こうなりますね。
PACSに画像を送信しておけばいいわけです。
たいていの病院にはサーバー室というものがあるはずです。
そこには画像サーバーがあります。
その画像サーバーにレントゲンやCTなどの画像が保存されているわけです。
画像の閲覧
PACSの役目は「保存」だけではありません。
もちろんですが、PACSに保存された画像はいつでも「閲覧」ができます。
PACSは画像管理のために作られただけあって、画像閲覧においてもユーザビリティが洗練されています。
- 比較する
- 計測する
- ワンタッチでウインドウを変える
- 拡大・縮小
CT装置自体でも、画像を閲覧する上で色々な機能がありますが、PACSほどではありません。
画像で病気を診断するならPACSで
ということになります。
PACSがないとどうなるか
PACSがもしなかったら、面倒だし不便だし非効率ですよ。
見に行かないといけない
例えば、みなさんはスマホで撮った写真を複数の友達に見せたい時どうしますか?
「友達みんな自分の家に呼ぶ✌️」
そんなわけありませんよね?
でも、PACSがない医療現場ではこれと似たような状況になってしまいます。
例えば、CTで患者さんを撮影したとします。
しかし、PACSがないとCT装置自体に画像を保存しておかなければなりません。
ということは、そのCT装置でないとその画像は見れません。
すると、こうなります。
CT画像を見たい人はCT室に来てね
どう考えても非効率です。
患者さんの画像は病院内のどこにいても見れる環境が必要です。
そのため、PACSが開発されたわけです。
過去の画像が見れない
上記で述べたように、CT装置やMRI装置自体の記憶容量は意外と大きくありません。
画像を保存できるのは1ヶ月か2ヶ月分くらいです。
ではCT装置やMRI装置自体の記憶容量がいっぱいになったらどうすると思いますか?
単純に古い画像から削除していくしかありません。
容量がいっぱいだと検査ができないからです。
つまり、PACSがなければ過去画像はほぼ見れません。
経過観察のため1年に1度CT検査を受ける患者さんは意外と多いです。
経過観察の画像診断では過去画像との比較が必須です。
逆に過去画像なしに経過観察は無理です。
経過観察においてもPACSは必須と言えます。
RISとは何が違うか
RISとPACSは別物です。
RISにできること
RISは主に患者さんに関する情報や予約情報を見るためのソフトです。
以下のような情報を確認できます。
- 名前
- 年齢
- 生年月日
- 身長・体重
- いつ、どんな検査が予約されているか
でもRIS単体ではレントゲン画像やCT画像は見れません。
その代わりにRISとPACSは連携しています。
RISの画面には、「この患者さんの画像を参照する」みたいなボタンがあります。
そのボタンを押すとPACSが起動して、患者さんの画像が見れるわけです。
PACSにできること
PACSは主に画像を見る専門です。
患者さんのレントゲン、CT、MRI、その他の画像を見ることができます。
しかし、患者さんに関する詳しい情報はPACSだけではわかりません。
患者さんに対して、いつ、どんな検査が予約されているのかは、やはりRISでなければわかりません。
PACSは、ほぼほぼ画像見るためのツールだと考えてもらっていいです。
最後に
PACSは何なのか、最後にまとめます。
- 画像を保存しておく、院内のクラウドシステムである
- 過去画像との比較など、画像診断に必要な機能が揃っている
- 画像以外で、患者さんに関する詳しい情報はPACSではわからない
- あくまでも画像の閲覧と保存のためのツールである
2020年現在では、PACSは基本的にはオフラインのツールです。
その病院で撮影された画像は、その病院でしか見ることはできないのが一般的です。
でも、患者さんは別の病院に紹介される場合もあります。
別の病院に紹介される場合は、情報提供として患者さんのレントゲン画像やCT画像を紹介先の病院に提供しなければなりません。
紹介先の病院で、また同じ検査をしなくて済むようにですね。
しかし、どうやって画像を紹介先の病院に提供すればいいでしょうか。
CDやDVDに画像を焼いて、患者さん本人に持っていってもらうか、郵送する。
これが、まだ一般的です。
でもこれ、はっきり言って時代遅れですよね…
しかし、最近ではオンラインのPACSシステムも徐々に普及しています。
これにより、CDやDVDでの画像のやりとりが不要になりますね。
近隣の病院同士で同じPACSシステムを使用し、患者さんの紹介の際は、オンライン上で画像を送信して情報提供完了
こんな医療連携も実際に行われているみたいです。
PACSは今後、保存や閲覧としての役目だけでなく、病院同士のコミュニケーションツールとして活躍の場を広げることになりそうです。
我々、診療放射線技師としてもメリットですし、今後も注目していきたいところですね。
というわけで今回はこれくらいにしようと思います。