【診療放射線技師】臨床実習生が本当に知りたいこと
こんにちは。
診療放射線技師のララです。
現役の診療放射線技師の方へ。
臨床実習生には、何を教えていますか?
CTの原理ですか?解剖ですか?
最近の話です。
今年就職した新人の診療放射線技師に、あることを教えてみました。
すると、このようなリアクションが返ってきました。
「学生のときにこれ教えてもらいたかったです!」
臨床実習先では教えてもらえなかったのかなぁ…
この経験から、気づいたことがあります。
「臨床実習生が知りたいこと」と、「現役の診療放射線技師が教えたいこと」との間にはギャップがあるということです。
というわけで、今回は「診療放射線技師を目指す臨床実習生が本当に知りたいこと」というテーマで、記事を書いてみたいと思います。
機械の使い方
臨床実習生が知りたいことの一つ。
結論から言うと、「機械の使い方」です。
エピソードがあります。
質問が自然と増える
僕が放射線治療を主に担当している時期でした。
その時期に、臨床実習生に放射線治療について教えなきゃいけない場面がありました。
先輩は、放射線治療の原理やしくみなどを教えていました。
臨床実習生は、「うんうん」とうなずきながら真面目に聞いています。
僕は「せっかくだから、先輩が教えてないことを教えたい」と考えました。
そこで思いついたのが「機械の使い方を教えること」です。
すると、臨床実習生は積極的に質問するようになりました。
こんな感じです。
- 「寝台下げるにはどうすればいいんでしたっけ?」
- 「ガントリどっちに回せばいいですか?」
仕事を教えてあげましょう
そして、臨床実習生は1週間ちょっとで放射線治療の仕事を覚えてしまいました。
MUとか線量率とか、放射線治療に必須の知識を知らないのに…です。
臨床実習生は「機械の使い方」を知りたがっています。
おそらく、学生は教科書とか読んでいても何も疑問を持ちません。
臨床実習で、実際の画像検査の様子を見ても、多分疑問を持ちません。
ところが、実際に機械を触ってみるとたくさん疑問がわきます。
疑問がわくと、臨床実習生自身が何を知りたいのかがわかってきます。
知識を教えるのは、後回しでいいと思います。
臨床実習生には、まず機械の使い方を教えることをオススメします。
検査の手順
もう一つ、エピソードがあります。
僕がMRIを担当していた時です。
臨床実習生にMRIについて教える機会がありました。
でも僕はMRIについてあまり詳しくありません。
とりあえずMRIについて知っていることを、臨床実習生にひと通り話してみました。
臨床実習生は、一生懸命聞いてくれました。
でも案の定、すぐに話すネタがなくなりました 笑
そこで、今度はMRIではどんな操作をしてるか、手順を超具体的に教えてみました。
こんな感じです。
- 「まず、位置決め画像を撮ります」
- 「次に、T2のサジタルを撮ります」
- 「撮ったT2サジタルは位置決め画像として使えます」
- 「それを使ってT2アキシャルの範囲を決めます」
- …
これを教え始めた瞬間、臨床実習生は必死にメモをとり始めました。
どうしてメモをとり始めたのか、臨床実習生に尋ねてみました。
すると、このような答えが返ってきました。
「検査の手順は就職してから、覚えることになるので…」
このことからわかるのは、これです。
「臨床実習生は、就職してから役に立つことを知りたがっている」
記事冒頭では、あることを教えたら新人が「学生のときにこれ教えてもらいたかったです!」というリアクションが返ってきたというエピソードをご紹介しました。
これも、単にCTの検査のやり方を具体的に教えただけです。
大学3、4年生くらいになると、「知識ばっかり身につけても就職してから何もできない」ということに、学生はわりと気づき始めます。
そう思いつつも、臨床実習先では
「自分はちゃんと勉強しているんだっていうことを、現役の診療放射線技師の人たちにもアピールしたい」
こういったマインドだったりします。
要するに、我慢しているわけです。
「自分達で基礎とか勉強しとくように」
とか言わずに、とりあえず検査のやり方を教えてあげてください。
臨床実習の重要性
新卒で就職してもできることゼロ
今思えば、診療放射線技師って大学では知識ばかり詰め込まれますよね?
それなのに、臨床につくとほぼ「できることゼロ」ですよね?
今までは「そういうもの」でなぜか通ってきてますよね?
でも医療従事者ではない人がこれを知ったらどう思うでしょうか。
「診療放射線技師は大学で4年も学んで、卒業しても現場では何もできないなんてありえるの??」
なんて言われそうです。
僕なら、何も言い返せないですね。
事実ですから…
かといって、大学の教育には今後も期待できません。
大学教育に関する記事もこちらで書いておりますので、よろしければぜひ。
診療放射線技師が教育者へ
もはや、学生にとっての本当の教育の場は、「臨床実習」じゃないかな、とさえ考えています。
繰り返しですが、学生が本当に知りたいのは「機械の使い方」や「検査のやり方」のはずですからですね。
事実、大学におけるカリキュラムで「臨床実習」の必要単位数が増えています。
ということは、いずれ我々のような現役の診療放射線技師が、教育者としての中心的な存在になっていくこともありうると考えられます。
学生がせっかく臨床実習に来ているのに、大学で教えてるようなことと同じことを教えるのはもったいないです。
とはいえ、難しいことを教える必要もないと思います。
僕が実践しているのは以下です。
- 機械の操作は実習生にやってもらい、僕は指示だけ出す
- ファントムの撮影を繰り返す(この時も操作は実習生にやってもらう)
本当にこれくらいです。
これをやれば、実習生は自然と色々質問をしてくるようになります。
そうこうしているうちに、実習生が臨床の仕事を覚えてしまいます。
経験上わかったことですが、学生のポテンシャルは高いです。
「実習生は、例年やる気がない」
とかいう見方は、わりと勘違いですよ。
まとめ
再度、繰り返しですが、臨床実習生に教えるべきことはこちらです。
- 機械の使い方
- 検査のやり方
そして、時代の流れとして、これから現役の診療放射線技師が教育者としての中心的な存在になっていくことが予想されます。
僕が思うに、教育者としてやるべきことは豊富な知識を身につけることじゃありません。
教育者がやるべきことは、学生が何を知りたがっているかをリサーチすることではないでしょうか。
というわけで、今回は以上です。
読んでいただいて、ありがとうございました。